一人二役の篠原涼子のドラマ「愛を乞うひと」!ネタバレのストーリー
ドラマ「愛を乞うひと」
2017年に篠原涼子が一人二役を演じる事で話題となったドラマ「愛を乞うひと」。
過去には原作が1998年に原田美枝子さん主演で映画化されたこともあります。
幼少時代に母から壮絶な虐待を受けたシングルマザー照恵が、数十年の時を経て、過去と向き合う物語です。
母に愛されなかった娘の苦悩を描いたドラマで、目を覆いたくなるシーンも多く心に深く残りました。
ストーリー1
母の照恵と娘の美草が住む家に一本の電話がかかってきた所から始まります。
電話の相手は警察であり、照恵の生き別れの弟、武則が詐欺、窃盗の容疑で逮捕されたと伝えられました。
照恵は美草に弟の存在を話しておらず、美草は初めて聞く言葉に動揺を隠しきれません。
武則は頼る相手もいないと、姉である照恵に警察官を通じ、着替えを差し入れしてほしいと頼んできました。
その一本の電話から過去の出来事がフラッシュバックしてきた照恵。
弟に再会すれば、忘れたい過去を思い出してしまう事を躊躇い、一度は断ろうとしましたが、美草が割って入り差し入れを持って弟に会いに行く事にしました。
久しぶりに会う姉と弟。
数十年ぶりに見た武則は、歳を取りそれでもどこか懐かしい感じを覚えます。
武則との再会は、死んだと聞かされていた母の存在も美草に分かってしまいました。
何故、今まで照恵が母の存在を隠し、死んだと偽って生きてきたのか後に語り始めました。
照恵には、大好きな父がいました。
父からもらったネックレスを大事そうに肌身離さず付けていました。
そんな父が病を患い入院し、照恵は父の友人宅へ預けられていました。
父は照恵の元へ戻る事はなく帰らぬ人となり、その時照恵はまだ9歳でした。
身寄りのない照恵は、施設へと預けられ生活する事になります。
父の死から数カ月後、照恵のいる施設へ訪問してきた女性がいました。
施設の先生から、「照恵ちゃんのお母さんよ」と言われ、視線の先に立つ母の姿はどこか懐かしい感じがしていました。
母と生き別れたのは、照恵がまだ3歳の時です。
そんな幼い頃でも母の記憶が少し残っていました。
母、豊子は照恵を引き取り、自分が住む自宅へと連れて帰りました。
豊子は六畳一間の部屋で、再婚した夫とその子供と三人で暮らしていました。
緊張しながら部屋に入る照恵に、豊子は「新しいお父さんだよ」と言いました。
夫、武人から「娘を何故施設から連れてきたんだ?」と尋ねられた豊子は、「家事くらいできるだろ」と冷たく言い放ちました。
家に来て早々、豊子は照恵に弟の武則を連れて買い物に行くように命じます。
照恵は豊子に言われるがまま、武則を連れて買い物へと出かけますが家に帰ると、布団の上に裸で横たわる武人と豊子の姿がありました。
豊子は照恵に気付くと、再び出て行けと物を投げつけます。
照恵の心には、母への恐怖が芽ばい始めていました。
照恵は毎日、豊子の顔色を伺いながら生活するようになりました。
豊子の苛立ちの矛先は照恵へ向けられ、髪を引っ張られ、殴る蹴るの暴力に耐える日々。
夫の武人は見て見ぬふりで照恵を助ける事はありません。
照恵は生きた心地がしませんでした。
そんな日々が続いたある日、豊子は荷物をまとめ子供を二人連れて武人の元から去って行きました。
トラックで移動した先は、豊子の新しい夫、三郎が待つ家です。
三郎は豊子に子供がいる事は聞かされておらず、動揺を見せるが豊子に押し切られ四人で暮らす事になりました。
照恵は、転校先で友達もでき息苦しい毎日から少し解放された気がしていました。
友達に誘われ初めて行く花火大会。
照恵は豊子の顔色を伺い、了承を得ようとしました。
豊子は行ってもいいと言いましたが、照恵にはもう一つ頼み事がありました。
お小遣いが欲しいと恐る恐る頼む照恵に豊子は手を出してと言います。
手を出した照恵に豊子は、タバコの火を押し当てました。
あまりの熱さと痛みに泣き叫ぶ照恵。
熱さと痛みに転げまわる照恵に容赦なく暴行を加える豊子の形相に怯える照恵を待つ友達は、失禁するほど震えその場を立ち去りました。
三郎が止めに入るも豊子の怒りはおさまりません。
三郎は照恵に同情の目を向けるも、豊子にも怯えていました。
いつも照恵の味方をしていた三郎も次第に豊子の暴力が始まると逃げるようになり、目を背けるようになりました。
照恵は死にたいと思うようになり、包丁を持ち出し自殺を試みるも豊子に見つかってしまいます。
包丁を自分に向け刺せという豊子は照恵ともみ合いになり、手を負傷します。
それに腹を立てた豊子は再び暴力を振い、近隣の人の制止も聞かず照恵を追い詰めます。
追い詰められた照恵は、もみ合っているうちに豊子と階段から落ちてしまいます。
豊子も照恵も大きな怪我はなく、起き上がる事ができましたが照恵の脳裏にはたった一つ疑問だった言葉が浮かんでいました。
ストーリー2
「お母さんはどうして私を産んだの?」
豊子は「私は産みたくなかった。お前なんか可愛くない。お前は誰の子か分かりゃしないんだよ」と言い放ちました。
更に照恵がショックを受けたのは、大好きだった父が本当の父ではないと言われた事です。
母に愛されていない事を知る以上に、父との関係も否定され心に大きな穴が空きました。
照恵への暴力は、学校を卒業した後も変わる事はありませんでした。
照恵が仕事で稼いだお金の全てを奪い、照恵へは小銭程度しか渡しません。
そんな生活に嫌気をさし、耐えきれなくなった照恵は初めて豊子に反発し、お金を奪い返し裸足のまま逃げました。
照恵を逃がさない豊子は外まで追いかけ、人目もはばからず照恵に暴力を振います。
その時、ちょうど学校から帰ってきた武則の姿がありました。
必死に逃げ回る照恵を見た武則は姉を助けたい一心から豊子を抑え込み、照恵に逃げるよう言いました。
武則のおかげで豊子から逃げる事ができた照恵は、美草の父である今は亡き夫、祐司に助けを求め救われました。
それから一度も豊子と会う事のなかった照恵ですが、一つだけ気になっている事がありました。
それは父の遺骨がどこにあるかという事。
照恵と美草は父を知る人物を辿り、台湾へ行く事にしました。
そこで照恵と再会したのは、産まれた時から照恵を良く知る父の友人夫婦であった。
夫婦は照恵の出生の事を詳しく話し、父と母の出会いについても語りました。
以前豊子から言われ、ずっと気にしてきた父の子じゃないかもしれないという事。
夫婦は間違いなく照恵の本当の父であるという事を話してくれました。
それを聞いた照恵は安堵の表情を見せます。
探していた父の遺骨も日本のお寺に供養されている事が分かり、照恵と美草は日本へと戻っていきます。
過去からずっと逃げてきた照恵でしたが、過去に触れる事で逃げる事をやめたと言い、何十年ぶりに豊子に会いに行く事を決めました。
美草が心配する中、二人で豊子が働く店へと顔を出します。
久しぶりに見る豊子は、とても老け込み年老いていました。
昔感じた冷たさが残っているのか、照恵は自分が誰かも言えず緊張したまま口を開く事はできません。
豊子は昔よく口ずさんでいた「銀座のカンカン娘」の歌を口にしました。
その歌に乗せるように、照恵も一緒に口ずさみます。
その時豊子は、そこに座っている女性が自分の娘である事に気付きます。
豊子は照恵に向かって、「娘さん?可愛いね」と言いました。
その言葉に堪えきれない涙を浮かべた照恵は、お店を後にします。
照恵が豊子に一番求めていた言葉。
「可愛いねって私も言ってほしかった」と母に対する愛情を口にしました。
そんな照恵に美草は「可愛いねってお母さんに言ったんだよ」と言います。
豊子もまた、照恵への愛情を見せていたのでした。
愛がテーマのドラマ
このドラマは、愛したいけど愛せない母の苦悩や愛してほしいけど愛してほしいと言えない娘の心情が描かれたドラマだと思いました。
お互い愛情はあるものの、その愛をどう伝えていいのか分からない不器用さが愛を暴力や支配へと変えてしまったのだと思います。
実の子なのに、愛さない親はいないと思うので根底では愛しくて仕方なかったのかもしれません。
豊子は孤独で寂しい人だと感じました。
このドラマを見て、篠原涼子さんが演じる豊子と照恵のそれぞれの気持ちがしっかり表現されていたと思います。
同じ役者なのにまるで別人で性格も違うように感じられるのは、プロならではの演技だと思います。
まだ見た事がない方に是非オススメの作品です。